「新感染半島ファイナル・ステージ」の感想。備忘録。 

前作に比べると、かなりダメかなと。見てる途中でがっくりした。

 

ヨン・サンホ監督はロメロの『ランド・オブ・ザ・デッド』や、『マッドマックス2』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、日本の『ドラゴンヘッド』などから影響を受けたという。パンフレットにそう書いてあった。

 

確かにオマージュと思しき描写はたっぷりあったが、もはや誰かが散々やったポスト・アポカリプスの世界を、とくに独自のアイディアもないまま提示していて困った。

 

無法地帯ソウルを仕切るのは『北斗の拳』のモヒカン集団の如く悪の魅力に欠ける民兵組織だ。連中の薄っぺらい野蛮さに参り、その民兵組織が楽しげにやる非人道的なゲームがこれまたなんのひねりもない。

 

世界観も引っかかる。前作で冒頭に鹿ゾンビを登場させていたのに、今回出て来るのは人間ゾンビのみ。アニマルゾンビの設定はどこに行ったのだろう。韓国は四年間も世界から隔離&放置されてゾンビ大国になったらしいが、大量に現れるゾンビはなにをエネルギー源として、あんなに元気ハツラツに走り回ってるのだろうかと、疑問も尽きない。早々に人間など食らい尽くしただろうに。

 

『新感染』の前日譚にあたる『ソウル・ステーション/パンデミック』で、もうかなり大々的なゾンビ騒動が駅周辺で発生しており、軍も出動して市民に発砲していた。あの時点で鉄道なんか完全麻痺する勢いの大騒動になっていて、その後の『新感染』とうまく繋がっていない。鹿ゾンビの件もあって、「なんかいろいろ設定が雑じゃね?」と首をひねった。同監督作の『我は神なり』もストレスの溜まる話で、今回やけにつらく当たるのは、サンホ監督の手腕に疑念の目を向けていたからでもある。

 

潤沢な予算を与えられたことで、派手なカーチェイスや無法地帯のセットで画面こそ華やかになったが、より娯楽大作に舵を切ったことで善人と悪人がきっぱりと分けられ、凡庸なハリウッド大作みたいになってしまった。おかげで誰が生き残り、誰が悲惨な末路を遂げるのかも大方想像がついてしまう。今回は端から社会が崩壊しているため、正常な社会がボロボロと壊れていく恐ろしさもなくなった。

 

ボロクソにけなしてしまったが、主役のカン・ドンウォンは相変わらず捨てられた子犬みたいな目をしつつ、キレキレの動きで拳銃やライフルをぶっ放していた。暴力映画大国の足腰の強さは感じたのだけれど。どうにも弱った。

 

新感染 ファイナル・エクスプレス(字幕版)

ソウル・ステーション/パンデミック [DVD]

コミックストリートラスト。切実な願いがこめられた魂の書「弟の夫」

ショットガン・ロード

ショットガン・ロード


ごぶさたです。


まずは自著の宣伝。


「ショットガン・ロード」発売予定。広域暴力団の実力者の変死をきっかけに、元殺し屋の漁師が実力者の息子を連れ、仲間だった殺し屋集団と対決。父親と慕った老狙撃手と義兄弟らを殺す旅に出る…というアクションブロマンス長篇です。


どうぞよろしく。評判上々です。






さて、3月にきれいに終わる予定だった、さくらんぼテレビのコミック評「コミックストリート」でしたが、いろいろあって、中途半端に終わってしまいました。最終回に掲載予定だった社会派コミック「弟の夫」をこちらに掲載しておきます。


PRIDE (上巻) (爆男COMICS)

PRIDE (上巻) (爆男COMICS)


読者の価値観を揺さぶりながら、切実な願いをこめた魂の書「弟の夫」

 
 うーむ、考えさせられる……。


 今回取り上げるのは、もうすでにベストセラーを記録している作品『弟の夫』(田亀源五郎 双葉社)だ。ゲイアーティスト界の巨匠が真正面から、同性愛をテーマにした社会派コミックである。すでに文化庁メディア芸術祭で優秀賞を獲得し、昨年のマンガランキングを騒がせた。


 ちなみに「考えさせられる」というのは、ゼニをもらう原稿において、使ってはならないワード(なにかを言っているようで、なにも言っていないに等しいから。ただの文字稼ぎである)のひとつだけれども、それでも同性愛という近いようで遠い問題を、ぐっと読者に問いかける作品であり、たいていの読者はやはり腕組みのひとつでもして、「うーむ、考えさせられる……」とうなったのではないかと思う。1巻だけでは、まだ物語がどう転がるのかが見えなかったので保留していたけれど、2巻でさらにテーマが深まったこともあり、ぜひ取り上げたいと思ったのだった。


 アパート経営をしながら、ひとり娘の夏菜を育てているバツイチ男性の弥一。父娘二人暮らしの家に、マイクなる熊のようなひげ面の大男がカナダからやって来た。弥一には疎遠になった双子の弟の涼二がいたが、ゲイだった弟は同性婚が許されたカナダでマイクと結婚していたのだった。しかし、弟はパートナーだったマイクを残して死去。マイクは愛した人の故国である日本を訪れたのだった。いわば、マイクは弥一にとって義弟にあたる。そしてタイトルのとおり弟の夫なのだ。夏菜の無邪気な提案のおかげで、この陽気なカナダの義弟を家に泊まらせることになるが……。


 ストレートの弥一や小さい娘の夏菜といったキャラクターを使い、「同性愛とはなんでしょう」という基本的な語り口からスタートする。またコミックの間に差しこまれる「マイクのゲイカルチャー講座」というミニコラムもあり、同性愛や世界のゲイカルチャー事情について、丁寧な説明がなされている。


 マイクは日本語も理解し、礼儀正しいジェントルマンであり、夏菜ともすぐに仲よしになる。弥一もどう接していいのか戸惑い、もやもやを抱え続けながらもマイクと共同生活を送る。わりとアットホームな異文化交流が描かれるが、ひんぱんに読者をドキッとさせるボールも投げつけてくる。もっとも印象的なシーンのひとつは、2ページにわたって描かれるマイクのシャワーシーンだろう。美女のシャワーシーンに慣れきっている読者にとって、毛むくじゃらの大男の裸は目のやり場に困ってしまう。「男性誌に女性の裸が掲載されているのが当然」という固定観念があるからこそ、マイクの引き締まった尻や腹筋にたじろいでしまう。(2巻には、ほとんど弥一の入浴シーンだけで終わる話も収録されている)また、弥一はご近所さんにマイクについて尋ねられるが、「弟の夫です」とは言えず、つい「弟の友人です」と答えを濁すところも印象的だ。


 作者の細やかな感性は2巻でも健在だ。「同性愛? いいじゃありませんか」という、リベラル気取りの人間に「本当か?」と迫るような問いがぎっしりつまっている。「悪影響でもあったら」と危惧し、夏菜の家に遊びに行くのを止める同級生の母親などは典型的な例だろう。未知の者に対する不安や恐怖が差別につながる悲劇を描きつつ、作者はさらに読者へ問いかける。「自分の子供が同性婚を望んだら認めますか?」と。


 たとえば、手塩にかけた娘がいよいよ結婚というとき、「娘さんをください」と挨拶に来る男に対し、父親というのはなにかと厳しくあたるものだけれども、「娘さんをください」と女性が現れたら、果たしてどうなるだろうか。


 あるいは両親が熟年離婚したとして、もし新しいパートナーが同性だったら、たぶん目ん玉飛び出るほど驚くだろう。本作品はたえず読者の価値観を揺さぶり続ける。家族の形とはなんでしょうと。


 本作品はラブストーリーとしても秀逸だ。愛しいパートナーを失ったマイクの喪失感や悲しみ、シングルファーザーとして子育てに奮闘しつつも、母親の存在を痛感させられる弥一の苦悩や葛藤などを、影や風景、男の背中で語ってみせる。俳句のような味わいに舌を巻く。読者の頭を激しくシェイクしつつ、切実な願いをこめた入魂の作品といえるだろう。

来年度山形なろう講座の講師陣と日程表

流

マイ・バック・ページ - ある60年代の物語

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2016年度の「なろう講座」のスケジュールと講師陣が決定しました。


いよいよ20年目に突入という記念すべき年になりましたが、事情があって公式サイトもちょっと更新がストップしております。とくに私が運営に携わっているわけではないのですが、宣伝の意味をこめてこちらで告知しておきます。今年も豪華講師陣です。横綱大関三役クラスがずらりで、序二段のふんどし担ぎが入る余地がありません。


2016年度「×××になろう講座」(敬称略)

 4月24日(日)東山彰良直木賞作家)
 5月22日(日)川本三郎(文芸評論家。読売文学賞ほか多数受賞)
 6月26日(日)大沢在昌(吉川賞作家)
 7月24日(日)酒井順子講談社エッセイ賞婦人公論文芸賞作家)
 8月28日(日)村田沙耶香三島賞作家)
 9月25日(日)角田光代井上荒野江國香織直木賞作家たち)※
10月23日(日)志水辰夫柴田錬三郎賞作家)
11月27日(日)今野敏山本周五郎賞作家)
12月11日(日)熊谷達也(山本賞&直木賞作家)
 1月29日(日)三浦しをん直木賞作家)
 2月26日(日)中島京子直木賞作家)
 3月26日(日)吉村龍一(小説現代長編新人賞作家)

※9月は特別講座&トークショーです。場所は遊学館ホール。料金未定。


●時間・午後2時より2時間。前半は受講生提出の短篇講評、後半はトークショー。最後にミニ・サイン会あり。


●場所・山形市遊学館3階研修室(山形県山形市緑町1丁目2−36)
 http://www.gakushubunka.jp/yugakukan/


●料金(予定)・大人2000円、大学生1000円、高校生以下無料。


●「小説家講座」ですが、「完全プロ志向。ぬるいやつお断りだぜ」というようなことはなく、ほとんど書かない人が大半です。気楽に訪れていただければと思います。


●たまに、やむをえぬ事情により時間と講師が変更になる場合があります。


●問いあわせ先&原稿送り先/sakka.naro@r7.dion.ne.jp

闇夜を照らす温かい灯り。瑞々しい成長物語『ニュクスの角灯』

ニュクスの角灯 1 (SPコミックス)

ニュクスの角灯 1 (SPコミックス)

SADGiRL (torch comics)

SADGiRL (torch comics)


長らく放置してました。


コミックストリートが3月で最終回を迎えるのですが、一回分余計に多く書きすぎたというトンマなことをしてしまったので、こちらに掲載しておきます。(ブログってどう書くんだっけと完全に忘れている)高浜寛の初長篇の新刊『ニュクスの角灯』についてです。お勧めです。以下、原稿。


 新聞を見て驚いた。嬉しいではないか。


 第20回手塚治虫文化賞候補作品が決まったのだが、そのなかに昨年の個人的1位に推した高浜寛の『蝶のみちゆき』が入っていた。(同じくこのコーナーで取り上げた『ゴールデンカムイ』も)


 こういうのは我が事のように嬉しい。「ほら見てみい、わしの目にまちがいないやろが」と、妙に誇らしくなるのだった。ちなみに選考結果は4月下旬に発表されるという。


http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/2016nominate.html#list(第20回(2016年)手塚治虫文化賞マンガ大賞」候補7作品決まる)

 
 このところ仕事のペースがぐっと上がったばかりか、ブログで愛猫との日常マンガまでアップしている高浜寛が手がける初長編『ニュクスの角灯(ランタン)1』(リイド社)を取り上げたい。前々回に取り上げた『SADGiRL』(リイド社)と同時に発売された。


 さまざまな依存症に陥った人間の苦悶と滑稽を描写し、睡眠薬精神安定剤依存症に陥っていた作者自身の人生を総括するような物語『SADGiRL』に比べると、本作品からは新しい道を切り拓こうというポジティブな印象を受ける。作者が愛して止まないアンティークを題材にし、孤独で自信を失っている少女が、自分の居場所を見つけ、徐々に成長していく前向きなストーリー。主人公の美世(みよ)がとてもキュートだ。


 1944年の熊本の防空壕で、米軍の爆撃にさらされている老婆と孫がいた。「もうだめ」と震える孫に、老婆は「もうすぐこの戦争は終わる」と諭し、自分の思い出話を語る。世界が一番素敵だったころの話を……。


 明治11年の長崎鍛治屋町。西南戦争で親を亡くした美世は、親戚に引き取られるが、何事も不器用な娘であるせいか冷たい扱いを受け、すっかり世界に絶望していた。奉公先を求めて道具屋「蛮」の戸を叩くと、出てきたのはヒゲ面のコワモテなおっさんと、パリから戻ってきたばかりのC調店主・小浦百年(こうらももとし)だった。「蛮」は世界の珍しい品々を扱う道具屋で、美世は文字を学び、たくさんの本に触れ、またチョコレートやミシン、ドレスなど、初めて見る品々に驚きつつ、好奇心を刺激されて世界に関心を抱くようになる。


 ヒゲ面の岩爺(がんじい)、店主の百年、お針子のおたまなど、温かい大人たちに導かれ、少しずつ希望を抱いてたくましくなっていくプロセスが、読んでいて心地よい。苦みと甘さのさじ加減が絶妙なところが、やはり作者ならではといったところだろうか。


 初長編作ということで、物語がどのように転がっていくか。もうすでにハラハラしている。たぶんギクッとするような展開も待ち構えているような気がするけれども、幻灯機(スライド映写機の原型)でパリ万博の様子を知り、「私がうじうじめそめそしとる間に/世界はすごいことになっとるんだ」と、美代が胸をときめかせるシーンが美しい。


 また、『蝶のみちゆき』と舞台が同じ長崎とあって、あの作品の準主役といえるキャラクターが登場するのも嬉しい。ニュクスとはギリシャ神話に登場する“夜の女神”を指し、要するに夜を意味するという。そんな闇のなかを照らす角灯(ランタン)のような温かみのある物語に魅了された。

新刊「猫に知られるなかれ」

猫に知られるなかれ

猫に知られるなかれ


ひさびさに(このブログもひさびさだが)7月末に新刊が出ます。こんな感じのやつです。
どうぞよろしく。引用したのは私のと、担当編集者N氏です。


宝石・ザ・ミステリー

宝石 ザ ミステリー2014冬

宝石 ザ ミステリー2014冬




短編載ってるけえ、こうてくれや、のう。

カタログ秘宝ひと駅宝石

5分で読める! ひと駅ストーリー 本の物語 (宝島社文庫)

5分で読める! ひと駅ストーリー 本の物語 (宝島社文庫)

映画秘宝 2015年 01月号 [雑誌]

映画秘宝 2015年 01月号 [雑誌]


えーと、ブログってどうやって書くんだっけ……。


そんな放置っぷりで、ついでに一か月に一度のカウンセリングもすっぽかしてしまいました。予約取り直すの面倒なんだよなあ。あー。


フェイスブックで誕生日が自動的にお知らせされたようで、「誕生日おめでとう」というメッセージを知人友人父親姉上からいただきました。すみません。フェイスブックも放置したきり、ログインパスワードも忘れてしまいました。あー。


山形は順調に寒くなり、猛烈に腹立たしくなりました。沖縄九州にとっとと逃げたいのですが、三か月散髪に行ってないので、まず床屋さんに逃げたいです。あー。灯油も買ってない。


さて、なにが言いたいかというと、11月24日の文芸フリマで映画評同人誌『Bootleg CATALOG』に寄稿しているということであります。



詳しくはこちら。


http://d.hatena.ne.jp/bootleg_magazine/20141120


私はといえば、メキシコ系アメリカ人(チカーノ)文化を凝縮した3時間大作の大好きな映画『ブラッドイン ブラッドアウト』について書いております。だいたい半分がサン・クェンティン刑務所のシーンで、東映ピラニア軍団もびっくりの顔面凶器な方々がいっぱい登場しているイイ映画です。それもそのはずで、現役囚人がエキストラで出演しているのでした。ワル度も高ければ、格調高いノワール&家族愛な物語です。もれなくトレホさんも出演しております。そのことについて語っております。ぬけぬけと言いますが豪華執筆陣でございますので、訪れたさいはどうぞよろしく。


で、今月の映画秘宝ですが、ミステリ(探偵モノ)映画特集ということで、ある最凶の探偵の紹介文と、この小説をなぜ映画化しないのか、という憤り文をふたつ、ちょこっと書いております。


で、来月ですが「5分で読めるひと駅シリーズ」というのが宝島社から出ているのですが、これの新作に作品を書いております。本がテーマということで、とくに本に敬意を払うことなく、本屋で本使って暴れるという偏差値の低い物語を書いてます。


で、冬と夏に光文社から「宝石・ザ・ミステリー」という読み切り短編特集本が発売されるのですが、そちらにも80枚くらいの短編を寄せております。こちらも年末発売。山形のシングルマザー探偵が雪と寒さにまみれながら頑張る話です。これも4つめになるので、そのうち本になるといいなと思っております。


で、「小説NON」「ジェイノベル」「ランティエ」で隔月連載。「小説トリッパー」「yomyom pocket(WEB)」にて、あいかわらずズルズルと連載しております。


で、コミックストリートも相変わらずやっております。山形新聞の極私的映画論も相変わらずでございます。


http://www.sakuranbo.co.jp/livres/cs/index.html


ブラッド・イン ブラッド・アウト [DVD]

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